(ハゲオヤジの)妄想
MEDIO:
自分的メモ。お題目は「使えない携帯電話屋の社長の妄言の検証」。
~先日の朝日新聞の一節 『電田構想』 損社長の発言
「仮に全国の休耕田と耕作放棄地の2割に太陽光パネルを敷き詰めると、約5000万kW、原発50基分を発電することができる」。
全国の休耕田と耕作放棄地は全国に54万ha(ヘクタール)ある。5000万kWというのは、夏場の東京電力の電力供給量の80%に相当する。
太陽光発電は、日差しが強い砂漠などでその可能性が高いとされているが、孫氏は、日本こそ適地であるという。
「太陽光パネルを砂が覆い発電効率を下げる場所より、日本のように適度に雨が降り、日照時間も適度に長いところのほうが適している」。
孫氏は、この電田プロジェクトと全国の屋根に太陽光パネルを取り付ける「屋根プロジェクト」(2000万kW)、その他の自然エネルギーで約1億kWを自然エネルギー導入の目標値に掲げるべきだとする。
「雨の日、夜、風の吹かない日などを含めて、国内消費の20%をまかなえる可能性がある。それが一つの答えになるのではないか」(孫氏)
なんだか数値が具体的に出ているんですが、そんなに簡単にうまく行くのか疑問に思いまして。
重箱の隅をつついているとか、揚げ足を取るだとか、そういう意見は別にして。正しいかどうかは自分で判断したいです。何も知らない素人が、基準もわからないのに(下手すると、単位も知らないおばちゃんが)「高い・低い」と騒がれている(騒ぎにしているのは、マスゴミですが)放射線とか、うんざりですから。(w
最初に単位の整理をします。
電力量の計算のはずなのに、単位が正確に合ってないと「比較対象が並べられない」ですので。
「5000万kWというのは、夏場の東京電力の電力供給量」 東京電力の年間総発電量からみて、「夏場ピークでの1時間での値」=5000万kWh
まず休耕田の面積から。
540,000ha=5,400,000,000m2
※この2割だと縦横33kmくらいの面積になります。
次に太陽電池パネルの効率について。
引用元は「独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」から。
単一半導体(結晶系Si等)ではバンドギャップは一定で、1.1~1.4eV。
これだと波長帯が広い太陽光の一部の「光」しか変換出来ない。この時の理論上の最大効率は30%以下です。
※現在、これを高める研究が進んでいます。筆頭(実現可能性から)は「入射光に対して深さ方向にバンドギャップの異なる材料を積み重ねる」方法です。
ただし、これは入射方向で光の減衰が発生するので、集光をしないと効率が落ちる欠点があります。集光された、実験段階での変換効率は上がるのですが、実際の敷設面積あたりの効率はあがりません。
集光=設置面積以上のレンズ等で光を集める必要があるからです。
※結局太陽光は、発電するにはエネルギー密度が低いのです
現状、高効率とされる「単結晶系Si」セルの変換効率は25%、これを組み立てた市販の太陽電池モジュール単位の効率は15%程度に落ちてしまいます。
さてさて。次は太陽光の件。
日本の中心付近の夏至の正中時の太陽光のエネルギー密度は1kWh/m2ほど。
※夏至の正中時=太陽光のエネルギー密度が最大になる瞬間です。もちろん普段はこんなにありません。
太陽電池の年間発電量は「設置容量の1000倍」で、おおまかな計算が出来ます。
...つまり、年間で1000時間相当の稼動しかしない...365日=8760時間ですから、1000時間というと11.4%。太陽電池の設計性能の1割ちょっとしか発電出来ないのです。
※もともと、日本の日照時間は年間2500時間までありません。
これは、夜だったり天気が悪かったりの条件によるので、設置場所を変える以外に、数値の上げようがありません。
※雨が降らないよう、天候を弄る、という手はありますが。(w
これで数値が出揃いました。計算すると
5,400,000,000m2 × 20% × 1kWh/m2 × 15% = 162,000,000kWh = 16,200万kWh (162,000MWh = 162GWh)
はい。夏至の正中時(ピーク性能)で計算すると、吹聴した5,000万kWhを超えるようですね。
しかし、雨・曇りも夜も発電出来ない太陽電池。年間で均して、1時間にすると
16,200万kWh × 11.4% = 1,846.8万kWh
(年間での総量は、1,846.8万kWh / 11.4% = 16,200,000万kwh = 162TWh)
あらあら37%しか達成出来ないですヨ...発電出来ない時間...損失を隠した発言だったと。(--;
この計算は「一年中ずっと夏至の正中時の太陽光の強さで、現時点での最高効率の太陽電池を使う」という激甘条件です。
まとめると、全国の休耕田面積の2割で電気を作っても、東京電力だけで必要な電力の37%にしかならない←ここ重要
さらに問題な点は、この発電設備は、天候に左右されるという重篤な欠陥を持っているということです。
一時、自分も太陽光含めた自然エネルギーでの発電技術とその革新に夢を見ていたのですが。
これには次の様な(「夢」と摩り替わられる)「妄想」があるから、だったんですよね。
1)技術的に可能であれば(発電コストや環境負荷を考えずに)いくらでも利用ができる、という妄想。 →燃料を消費したり、二酸化炭素を出したりしない、という「理想」の部分だけが誇張されている。(「今の時代はロケットがある」だけで「誰でも月に行ける」と思うのに等しい、と考えてください)
2)設備のコストは、「技術の革新」と「大量生産」によって、配慮する事の必要が無い程度の金額になる、という妄想。→近い未来、発電所をお金をかけずに作れる(個人で気軽に所有出来るほど安価に)ほど技術が発達する、という思い込み。(まだまだ、自宅の電気を全てまかなえる程の大規模(=高価)な太陽電池設備は、設備償却する前に耐用年数が終わります。
3)設備を製造するためのエネルギー(将来の原油の値上がり等)による、設備等のコスト高は無い、という妄想。→太陽電池の発電する電気エネルギーだけで、太陽電池パネルは作れません。どうしてもある程度の価格が発生しますし、今後はその原油の値は上がる一方でしょう。
4)世界中どこでも発電施設を作ることが可能、そしてその出力をコスト0でどこにでも送電出来・使うことが可能、という妄想。→設備はどこにでも設置出来るとか、離れた場所に送電したりするための(都合の悪い)コストは見て見ないふり。(頭の中で「すばらしい」と思ったら負の部分は一切見えないのは宗教と同じ)
永久機関は存在しないという熱力学での証明があります。が、この手のエネルギーは「既に自然にあるものを利用するから、無料で、環境負荷(二酸化炭素排出等)が無い、まるで永久機関の様な理想のエネルギー」と思われているようです。
風力、太陽光などは、それ自体は確かに無料ですが、それを電気のようなエネルギーとして取り出したりする設備、それを運ぶ送電等の設備は高価で、かつ取り出せるエネルギー量に対して劇的なコスト低減が見込めないものです。(上記通り、エネルギー密度が低すぎるため)
※先ほど計算した太陽光での電力量が原発約18基分として、これを太陽光で発電すると縦横33kmの土地いっぱいに敷き詰めた太陽光発電モジュール全部に配線して、電気を集める設備が必要なのです。ただ電源線の量だけでなく、電圧等を安定化する機器等、電気屋だったら恐ろしい金額になることは想像に難くありません。
ちゃんとした技術屋はここら辺をわきまえているので、損氏みたいな事は言えない(言わない)んだろうけど。
使えない携帯の方は放置して「自然エネルギーによる発電」をやるそうですが、目的は「自然エネルギーでの発電電力は、通常の電気代に対して高価で電気事業者に売電出来る」という部分でしょう。
携帯他社との接続料を高価にして差額を儲け、自社ユーザは無料通話と宣伝しユーザを集めている「悪質な携帯屋稼業」と全く同じ事を、発電ビジネスでもやろうとしているんでしょうねぇ...
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